~1910's

小さく隠れる
コンパクト

コンパクトが登場したアールヌーボーの時代。
ファッションが変化し、女性が外出する機会が増え、化粧の文化が定着し始めました。コンパクト誕生の初期は人前での化粧直しがタブーだったため、小さく目立たない大きさや隠れたデザイン(ネックレスやステッキなど)が多く作られました。
やわらかく女性らしいフォルムが特徴です。

パフュームボトル

1889年イギリス純銀

香水瓶に白粉入れが隠されている珍しいコンパクト。スターリングシルバーの輝きと香水瓶の丸みで、パウダーの扉が見えないように隠されています。19世紀末、人前での化粧が容認されていないころにつくられた、アイディア溢れる作品です。

ヤドリギ

1900年フランス

アールヌーボー様式の典型的なモチーフ、「宿り木」がデザインされています。宿り木の下で永遠の愛が約束されるという言い伝えは、西欧の中ではロマンティックで神聖なテーマです。それが1900年前後の時代に流行したのは、政治や経済、文化が激動の時代にあり、さまざまな変化が押し寄せていたからでしょうか。チェーンを通す金具がついているのでペンダントとして胸に下げ、お守りとしていたのかもしれません。

ホワイトガーデン

1915年〜1917年アメリカ純銀,エナメル

銀で作られた小ぶりなコンパクト。ホワイトエナメルとブルーの小花をハンドペイントしてあります。コンパクトが一般に使われるようになり始めたころの優雅な雰囲気を持っています。シルバーのフィンガーリングを指に通して踊ったのでしょうか、当時の華やかさを感じる逸品です。

エナメルコンパクト(アイスブルー)

1918年〜1921年デンマーク純銀,エナメル

美しく繊細な銀の細工とエナメリング加工が施されたコンパクト。デンマーク謹製のものは珍しく、貴重です。首元の美しさが際立つ氷河を思わせるブルーのエナメルは、発色させるのが難しいと言われています。

グリーンネックレス

1916年イギリス銀,エナメル

ライムグリーンのペンダントトップが白粉入れになっているコンパクト。スターリングシルバーが使用され、「SPIDER WEB」という蜘蛛の巣パターンの上にエナメルを焼付けるという高度な技術が使われています。化粧文化が広まり始めた頃に宝石店などで扱われ、隠すよう身に付けられて使われました。

ロシアンエンブレム

アメリカブラス,ラッカー

ペールブルーグリーンに双頭の鷲の紋章が付いた小ぶりなコンパクト。品を感じさせつつも存在感のあるこの紋章は革命以前の帝政ロシアのです。 製造は「ANNA・PAVLOVA」社、ペテルブルクで生まれた有名なバレリーナの名に由来しています。
中には思いもかけないポピーレッドのチークが残り、品のある表情の中に情熱を隠し持つ女性を映したかのようなコンパクトです。

フェミニンヴァニティ

1910年代アメリカ

コンパクトが女性のライフスタイルの中の地位を確立しつつあったころに作られた、多機能なコンパクト。初期の作品は、貴金属を使ったコンパクトが多くあります。このコンパクトもすべて銀で作られ、内側には鮮やかなグリーンの布地が張られています。パウダー、チーク、口紅、爪やすり、香水のかわいらしい容器が配され、そのほかにも物が入れられるようになっています。細長い楕円が特徴であるハンドメイドのチェーンは、華奢な印象に見せながらも強度のあるものです。

ミニ・シャトレーヌ

1910年〜1920年代アメリカ

シャトレーヌ(女城主)とは中世の時代に戦いにいく男性が妻に城の鍵を預け、その女性がたくさんの鍵を腰につけるための装身具を指します。
それをデザインのヒントにしたこのコンパクトは、ピン飾りに香水、コンパクト、ペンが垂れ下がっています。

帝政ロシアのメッシュバックコンパクト

1885年帝政ロシア

帝政ロシア時代の貴族が所有していたメッシュバッグで、蓋の部分の裏が白粉入れになっています。
留め金の部分にはサファイヤが施され、金メッキのシルバー部分やエナメル仕上げの蓋に施された模様は高度な技術を要する、美術的価値の高いコンパクト。メッシュバッグには舞踏会のチケットが入れられたのでしょうか。革命で多くの美術品が失われる前の、美しい作品です。

ビレンドラ王家からの贈り物(ブレスレット)

〜1900年ネパールスターリングシルバー,骨

ネパールのマハラジャ、ビレンドラ王家由来のコンパクト。銀で打ち出されたネパールの女神〈Deity〉が白粉入れです。
当時使用されていた白粉は有毒な水銀化合物でした。水銀の白粉は青白く透明感があり、それは美しかったと伝えられています。
対となるネックレスも収蔵されており、コレクションが収集されるきっかけとなったコンパクトです。

ビレンドラ王家からの贈り物(ネックレス)

〜1900年ネパールスターリングシルバー,辰砂,黒翡翠

ネパールのビレンドラ王家に伝わっていたネックレス型のコンパクト。手彫りによる銀の繊細な装飾が施されており、見事な黒翡翠と辰砂が連なっています。制作目的として呪術的な意味が強く、重量感のある作品です。当時は白粉が入っていましたが、それは有毒な水銀化合物でした。女性たちはそれでも、美しさを手に入れたいと願っていたのです。このコレクションが収集されるきっかけとなったコンパクトです。

1/
~1910's